「調停なさず」とは

「調停なさず」とは

1 家事調停事件の終了

 離婚や遺産分割などの家事調停事件のほとんどは,(1)調停成立,(2)申立人による調停取り下げ,(3)調停不成立,のいずれかで終了します。

(1)調停成立

 当事者双方が調停条項案に合意して調停が成立する場合には,裁判官が,申立人と相手方に対し,調停条項を読み上げて内容を確認して成立となります。

 調停成立のときには当事者同席が原則的な取扱いとなりますが,代理人のみ同席する,別席で裁判官が個別に調停条項を読み上げる,などして当事者が顔を合わせないで調停が成立することもあります。

(2)調停取り下げ

 申立人は,いつでも調停を取り下げて家事調停事件を終了させることができます。

 申立人が調停取り下げに至る事情は様々ですが,調停を不成立とし,審判に移行したとしても最終的な解決に至らない可能性がある場合,一旦調停を取り下げて,審判では最終的な解決に至らない問題を地裁で解決して,その後,再び家事調停事件に戻ってくるということがあります。

 具体的には,遺言の有効性に争いがある場合や,相続財産の範囲に争いがある場合などです。

 被相続人の財産につき使途不明金があり,相続人の一人が被相続人の意思に基づくことなく,その財産を自分のものにしているなど不当利得の存在を他の相続人が主張しているような場合,地裁で不当利得返還請求訴訟を提起し,解決後,再び遺産分割調停事件の申立を行う必要があります。

 (3)調停不成立

 調停不成立の場合には,審判に自動的に審判に移行するケース(家事事件手続法別表第2調停事件,遺産分割など)と,審判には移行せず,別途訴訟提起が必要なケースがあります。

 例えば,離婚の場合,調停前置主義が取られているため,離婚を求める当事者は,先ず家裁に夫婦関係調整調停事件の申立を行うことが原則となります。そして,調停が不成立となった場合,調停不成立証明書を取得して離婚訴訟を提起することになります(※調停取り下げでも,調停において実質的な話し合いがあれば離婚訴訟できます)。

 夫婦関係調整調停事件(離婚)と婚姻費用分担調停事件の二つを申し立てており,いずれも不成立になった場合,離婚については離婚訴訟を提起する必要がありますが,婚姻費用については審判に移行することになります。

2 「調停なさず」の場面

 その他に,家裁における調停終了原因の一つには「調停なさず」と呼ばれるものがあります。

 紛争解決を求めて調停を申し立てたのに,家裁が調停をしないで終了させてしまうことがあるのでしょうか。

 その根拠は家事事件手続法第271条

 『調停委員会は,事件が性質上調停を行うのに適当でないと認めるとき,又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるときは、調停をしないものとして、家事調停事件を終了させることができる。』

 ①事件が性質上調停を行うのに適当でないと認めるとき,又は,②当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるとき,に該当すると調停委員会が判断する場合に,調停をしないという決定を行うことになります。

 具体的なケースを一つご紹介します。

 被相続人の財産に使途不明金があり,相続人の一人が不当利得を主張している場合には,調停委員会から申立人に対し調停の取り下げと地裁での訴訟を促されることがあります。

 これに対し,申立人が調停の取り下げを行わない場合,そのままでは(1)調停が成立する見込みは少ないですし,(3)調停不成立として審判に移行しても,最終的な解決には至りません。

 このようなときには,「①事件が性質上調停を行うのに適当でないと認めるとき」にあたるとして,家裁が家事事件手続法第271条に基づいて「調停なさず」の決定を行うことが考えられます。

 その他,離婚調停が不成立となった後,すぐに再度の離婚調停の申立てがなされた場合には,「②当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるとき」にあたるとして「調停なさず」の決定を行うことがあります。

                            弁護士 徳永幸生

 

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